計測機器の校正(ノギスの社内校正)
- SOKADA
- 2023年9月16日
- 読了時間: 13分
更新日:1月24日
もくじ
1. 計測器校正の基礎知識
2. 計測器校正の必要性
3. 計測器校正の実施方法
1-1. 計測器の校正とは?
計測器の校正とは、計測器が持つ測定の不確かさを定量化するために、定められた標準物を用いて、計測器の測定値を比較し、誤差を評価することです。この誤差を評価することで、計測器の測定値の正確性を確保することができます。
計測器校正を実施することで、正確な測定値を得ることができ、製品の品質や安全性を高めることができます。
計測器の校正には、専門の機関による校正が必要です。校正を実施する機関は、正確な校正を行うために、適切な環境条件や校正用の標準物を保有しています。
また、校正には計器を調整して誤差を修正することは含みません。
検査とは違うため、許容範囲はなく、したがって合否判定をするものでもありません。
1-2. 計測器の校正の目的と意義
計測器の校正の目的は、正確な測定値を得るために、計測器の誤差を最小限に抑えることです。校正を実施することで、計測器の精度が向上し、製品の品質や安全性を高めることができます。
また、計測器校正は法律によって義務付けられている場合もあり、法令遵守にも重要な役割を果たしています。
さらに、計測器校正により、不必要なコストやロスを抑えることができ、経済的な効果も期待できます。
1-3. 計測器の校正の種類
計測器の校正には、大きく分けて以下の4つの種類があります。
1.初期校正:新しい計測器を使用する前に行われる校正で、初期不良や製造上の問題がないか確認するために行われます。
2.定期校正:計測器の精度が低下しないように、定期的に実施される校正です。校正の頻度は、使用頻度や環境によって異なりますが、一般的には1年に1回から3回が推奨されています。
3.緊急校正:計測器の精度が急激に低下した場合に行われる校正で、日常点検等で異常が発見された場合に実施されます。
4.廃棄時校正:計測器を廃棄する直前に行われる校正で、直前の検査まで計測器の値が正確であったことを確認するために行われます。
以上のように、計測器の校正は正確な測定値を得るために必要な手続きであり、製品の品質や安全性を高めることができます。定期的な校正の実施が重要であり、適切な頻度で校正を行うことで、計測器の精度が低下することを防ぎ、正確な測定値を得ることができます。また、計測器の校正には様々な手法があり、校正のための機器や基準物などが必要です。
計測器の校正は、一般的に、専門の校正業者に依頼することが推奨されています。専門業者は、高度な技術や知識を持ち、正確な校正を実施することができます。また、校正業者は、国際的な校正機関の規格や要件に準拠した校正を提供することができるため、信頼性が高いとされています。
さらに、計測器校正には、国内外で認定された機関や規格があります。日本では、計量法に基づく校正が行われ、国際的には、ISO規格に基づく校正が行われます。これらの規格に準拠した校正を実施することで、国際的な規格に適合した製品を生産することができます。
最後に、計測器の校正は、企業や個人が保有する計測器だけでなく、公的機関が保有する計測器にも適用されます。公的機関が保有する計測器の校正には、国際基準に基づいた校正が必要であり、正確な測定値を提供するために欠かせないものです。
2-1. 計測器校正が必要な理由
計測器の校正は、正確な測定値を得るために必要な手続きです。
計測器は、使用環境の変化や長期間の使用によって精度が低下することがあります。そのため、定期的な校正が必要です。
計測器の校正を怠ると、誤った測定値を得る可能性があります。これは、製品の品質や安全性に悪影響を与えることがあります。
計測器の校正は、ISO9001などの品質管理システムの要件の1つでもあります。校正を実施することで、品質管理においての信頼性を高めることができます。
2-2. 計測器校正のメリットとデメリット
計測器校正には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
【メリット】
正確な測定値が得られるため、製品の品質や安全性を高めることができます。
ISO9001などの品質管理システムの要件を満たすことができます。
長期間の使用によって精度が低下した計測器でも、校正によって計測誤差を評価し、修理することによって精度を回復することができます。
【デメリット】
計測器校正には、一定の費用や時間が必要です。
校正によって計測器が異常を示す場合は、修理や交換が必要になる場合があります。
2-3. 計測器校正の頻度とタイミング
計測器の校正の頻度やタイミングについては、以下のような指標があります。
ISO9001などの品質管理システムでは、計測器の校正頻度やタイミングについての指針が定められています。これに従って、計測器の校正を実施することが推奨されます。
計測器の使用頻度や環境によっても、校正の頻度やタイミングは異なります。使用頻度が高い場合や、環境の変化が大きい場合は、より頻繁に校正を実施する必要があります。
定期的な校正を行うことで、計測器の正確性を維持し、測定値の信頼性を高めることができます。
また、校正によって検出された測定値の偏りやずれを修正することができ、製品の品質や安全性を確保することができます。
さらに、定期的な校正によって、故障や不具合を早期に発見し、修理や交換のタイミングを判断することができます。これによって、計測器の寿命を延ばし、コスト削減につながることも期待できます。
また、計測器の使用目的や測定対象によっても、校正の頻度やタイミングが異なります。たとえば、医療機器や航空機の計測器などは、高度な精度が求められるため、より頻繁に校正を実施する必要があります。
一般的には、計測器の校正は定期的に実施することが推奨されています。具体的な頻度やタイミングについては、ISO9001などの品質管理システムの指針に従うのが一般的ですが、以下に一般的な校正頻度の目安を示します。
使用頻度が高い場合は、半年に1回から1年に1回程度の頻度で校正を行うことが推奨されている。
使用頻度が低い場合は、1年に1回から2年に1回程度の頻度で校正を行うことが推奨されている。
測定値の変動や環境の変化が大きい場合は、より頻繁に校正を実施することが必要。
ただし、これらはあくまでも目安であり、使用状況や環境によっては、より頻繁な校正が必要な場合があります。また、定期的な校正だけでなく、測定前にも校正を実施することが重要です。測定前に校正を実施することで、計測器の正確性を確保し、測定結果の信頼性を高めることができます。
定期的なメンテナンスや日常点検も欠かせません。また、計測器の取扱い方や保管方法にも注意が必要であり、正確な測定値を得るためには適切な使い方をすることも重要です。
「日常の保守点検」とは
測定機の正常な動作とその状態を点検・維持することであり、例えばノギスの主な
点検項目は、・基点確認 ・測定面の平行度・メモリ線や数字の読み取り・作動状況(ガタ・ねじのゆるみなど)・外観の点検(測定部の損傷 キズ、かえり、摩耗などがないか)
また、保守作業としては清掃や給油などが挙げられる。
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定期的な校正には、専門の業者に依頼することが一般的です。多くの場合、計測器メーカーが校正サービスを提供しており、校正に必要な機器や技術を持った専門の技術者が実施します。また、ISO9001などの品質管理システムでは、校正業務を実施する業者の選定についても指針が定められており、信頼性の高い業者を選定することが求められます。
3-1. 計測器校正の流れと手順
計測器校正は、測定機器や計測装置が正確に測定することができるように調整し、検証するプロセスです。以下は一般的な計測器校正の流れと手順の一般的なガイドラインです。なお、具体的な計測器や業界によって要件や手順が異なる場合がありますので、個別の要件に従うことが重要です。
1.準備作業:
・計測器を適切な環境に配置します。温度、湿度、振動などの環境条件が規定に従っていることを確認します。
・必要な校正標準や比較機器を用意します。
2.初期評価:
計測器の現在の性能を評価します。これには、ゼロポイントの調整や出力範囲の確認が含まれます。
3.校正標準の設定:
校正標準を用いて、正確な値を持つ基準を設定します。これは、既知の値を持つ標準物体や装置を使用することが一般的です。
4.測定:
計測器を使用して、校正標準の値を測定します。
5.データの記録と解析:
測定結果を記録し、解析します。これにより、計測器の性能に関する情報を得ることができます。
6.誤差の評価:
計測結果を校正標準と比較して誤差を評価します。誤差が許容範囲内に収まるかどうかを確認します。
7.必要に応じた調整:
誤差が許容範囲外の場合、計測器を調整して誤差を修正します。計測器を校正標準に合わせて調整します。これには、ゼロ調整(offset calibration)やゲイン調整(gain calibration)が含まれます。
8.記録と証跡:
校正の詳細な記録を残します。これには、校正日付、実施者、校正標準の情報、調整手順などが含まれます。
9.検査成績書・校正証明書:
校正の結果をまとめた検査成績書を作成します。将来の参照や追跡に使用されます。
10.校正ラベルの取り付け:
計測器に校正ラベルを取り付けて、最終的な校正が行われたことを示します。
11.定期的な再校正:
計測器は時間と共に誤差が発生することがあるため、定期的な再校正が必要です。再校正スケジュールを設定し、定期的な校正作業を維持します。
計測器校正は、正確な測定データを確保し、品質管理や安全性確保などの目的に重要な役割を果たします。したがって、正確な手順に従って実施し、記録と証拠をしっかりと保管することが不可欠です。また、専門知識と設備が必要な場合があるため、専門の校正技術者によって実施されることが多いです。
3-2. 計測器校正に必要な機器と資格
計測器校正に必要な機器と資格は、以下のようになります。
校正用の標準器や測定器
計測器の校正には、校正用の標準器や測定器が必要です。これらの標準器や測定器は、正確な測定ができるように定期的に校正されている必要があります。
資格や技能
計測器の校正には、専門的な知識や技術が必要となります。校正を行う担当者には、適切な資格や技能が必要となります。計測器の種類や用途に応じて、必要な資格や技能が異なるため、事前に確認することが重要です。例えば、日本においては計量士法に基づき、計量士などの資格が計測器の校正に必要となります。
しかし、一般的に社内の品質管理のため計測器の精度を確認する作業を行うだけであれば、特に資格が必要なわけではありません。それぞれの社内規定などで定めた教育や訓練などを受け、社内基準に見合う認定者とすればよいでしょう。
3-3. 計測器校正を自社で行う場合の注意点
計測器校正を自社で行う場合には、以下のような注意点があります。
校正作業の正確性・信頼性を確保するため、計測技術者の能力確認が必要
校正に必要な器具・機材・標準物質を適切に用意する必要がある
校正結果の報告書作成には、計量士の資格が必要な場合がある
校正記録の保管期間は、ISO9001などの品質管理システムに従い、適切に管理する必要がある。
校正には時間がかかるため、生産ラインや業務のスケジュールを考慮する必要があります。校正期間中は計測器が使用できないため、生産ラインの停止や業務の一時停止が必要となる場合があります。また、繁忙期や重要なプロジェクトが進行している場合には、校正のスケジュール調整が必要になる場合があります。
校正作業には正確性が求められるため、作業環境や作業方法にも注意が必要です。校正作業には静電気や振動、温度変化、湿度変化などが影響を与えるため、校正作業を行う環境は温度や湿度、清潔度などに注意が必要です。また、校正時には正確な手順に従って作業を行う必要があるため、作業者には注意深さや正確性が求められます。
自社で計測器校正を行う場合には、校正結果の証跡や記録の管理も重要です。校正記録には、校正日時や校正担当者、校正方法、校正結果などを記録し、保管する必要があります。また、校正作業が正確かつ適切に実施されたことを示す証明書を発行することが必要になる場合もあります。
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最新の情報や技術の習得が必要です。計測器校正には、常に最新の技術や情報にアクセスして、継続的な学習が必要です。また、法規制や規格の改正に対応するためにも、情報収集が必要となります。
以上のように、自社で計測器校正を行う場合には、専門的な知識や技術の習得、機器の用意、作業環境や作業方法、校正記録の管理などに注意が必要です。また、校正にかかる時間やスケジュールの調整にも注意が必要です。企業の規模や状況に応じて、計測器校正を外部委託することも検討することが重要です。
3-4ノギスを社内校正するときの注意点
社内でノギスを校正する際には、精度を確保し、正確な測定を維持するために以下の注意点を考慮することが重要です。
標準器の確保:
校正に使用する標準器(ゲージブロック、キャリパーチェッカーなど)は、信頼性が高く、適切に保管されている必要があります。信頼性のある標準器具を使用しないと、校正の正確性が損なわれる可能性があります。また定期的に信頼のおける校正機関で校正された標準器を使用してください。
測定環境の管理:
温度、湿度、振動、塵埃などの外部要因がノギスの精度に影響を及ぼす可能性があるため、校正環境を管理し、安定させることが大切です。
測定対象の清掃:
ノギスのスケールやスライダー、測定対象をきれいに清掃し、外部の汚れや異物が精度に影響を与えないようにします。
精度の確認:
ノギスを標準器と比較して校正し、どれだけのずれがあるかを確認します。精度の差が許容範囲内であることを確認するために、複数の点での測定を行います。
記録とトレースビリティ:
校正の結果を正確に記録し、校正日付や担当者などの情報も含めて保管します。また、標準寸法とのトレースビリティを確保し、すべての校正手続きが追跡可能であることを確認します。
定期的なメンテナンス:
ノギスのメンテナンスが正確な測定に影響を与える可能性があるため、ノギスの清掃と定期的な点検、調整を行います。
資格を持つ担当者:
ノギスの校正は、計測技術の知識や能力を持つ担当者によって行われるべきです。校正に関するトレーニングと経験が必要です。
外部の専門家の協力:
ノギスの高度な校正や修理が必要な場合、外部の校正機関に依頼することが必要かもしれません。
これらの注意点を守ることで、社内でのノギスの校正をより効果的に行い、正確な測定結果を確保することができます。
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